第十一話
57 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 01:28:44
ID:083C3Yby0
ブーンは元の位置に戻ると、構えを変えた
正眼の構えから、上段の構えに
( ^ω^) 「先に・・・・言っておくお・・・・」
手下達 「・・・・・・・・・・・」
ブーンを半円状に取り囲む手下達は、何も反応を示さず、ただ間合いをじりじりと縮めていく
( ^ω^) 「今から・・・一人・・・・殺す気で打ち込むお」
手下達 「・・・・・・・・・!」
反応が返る。顔には出さないが、全員、かすかに動揺した
しめた、とブーンは思う
今のこの状況を崩すには、何かきっかけが必要だ
誰か一人をむごたらし殺せば、それで他の者に警戒と動揺を与えられる
しかし、それはブーンにはできない。不殺を決めているブーンに殺しはできない
だから、こうして言動で惑わせる
59 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 01:33:47
ID:083C3Yby0
間合いを詰めることに、躊躇いが産まれた
そして、わずかだが、功を焦った一人が前に一歩だけ、半円からはみ出した
(#^ω^) 「そこおおおおおおおおお!!!」
槍使い 「ぐ・・・・!! うりゃああああああああ!!」
機先の声と、視線で、はみ出す槍使いを威嚇
槍使いは、その声に押されるように槍を振りかぶり、叩きつけるように前に打ち込んだ
だが
グォン!! と、振り下ろした先に、ブーンはいなかった
いや・・・・ブーンは一歩も動いていなかった
槍使い 「!?」
槍使いのその一撃は、周囲の緊張の糸をぷっつりと切ってしまった
手下達 「うおおおおおおおおおおおおっっっっっっっ!!!!!!!」
手下達が、ブーンに殺到する
64 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 01:43:21
ID:083C3Yby0
刀が、槍が、薙刀が、ブーンめがけて突きこまれる
大人数で同時に切りかかる場合、切り込みは突きに比べ、相手により近づかなければならない
ゆえに、全員の攻撃は、突き一つに絞られる
ブーンはそれを狙っていた
( ^ω^) 「はぁっ!」
一歩、おおきく後ろに跳び、門柱の間よりも後ろに移動する
そして、全員の得物が数瞬前までブーンがいた位置に差し込まれる
その瞬間を逃さず、ブーンは上段に振りかぶった刀を、振り下ろした
(#^ω^) 「おおおおおおおおおおおおお!!!!!」
金属が、互いにぶつかり、そして地面へとぶつかる
しかしブーンの斬撃は、そこで止まらず、さらに下へと力が加わった
バギィィィィィィィィィィイイインン!!!!!!!!
大音量と共に、すべての武器が砕け散る
ブーンの刀と共に・・・・・・
67 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 01:50:11
ID:083C3Yby0
手下達 「・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・」
あまりの出来事と、腕に残る痺れに、全員放心状態になる
信じられるか? 残っていた人数は十人。薙刀が二つに槍が三本、刀が五振りだ
それに、ブーン自身の刀も加わり、合わせて十一もの刃物が一撃で粉砕された
目の前に起こった現実、自分の持っていた常識、そのバランスが崩れかける
( ^ω^) 「・・・・・これでも、まだ続けたいのかお・・・・?」
常識破りを行った男は、半ばから折れた刀を下げ、
さも、こんなことなど造作もない、という顔をしている
手下達は戦慄した
自分たちは、とんでもない奴らを敵に回していないか・・・・?
71 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 01:58:00
ID:083C3Yby0
槍使いは、自分の手に返ってきた感触に、違和感を感じた
槍 (固い・・・・・・?)
そう、固い。硬いではなく固い、だ
いや、どちらのかたいでも、おかしいのだ
目の前で血に染まる着流しと槍。その感触は軟いはずだ
疑問を感じていると、
先生 「・・・・この着流しは、割と高かったんだがな・・・・」
ぐっ、と槍が握られた
握られた、と思った瞬間には、ねじられ、そして奪い取られていた
槍に体重を込めていたため、身体が支えを失い、おおきくぐらつく
そこに、先生の腰の最後の一刀が、目と目を結ぶ線と平行に走った
槍 「なぜ・・・・・だ・・・・・?」
意識がなくなる寸前。 先生の呟きが聞こえた
先生 「まったく・・・傷口が開いたな・・・・さらしを巻いていて助かった・・・・」
78 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 02:07:36
ID:083C3Yby0
残るは三人、いずれも侍風だ
一人は右に、二人は左に位置している
先生は、刀を正眼に構え、動きを待つ
先に動いたのは、右の一人だ
先生 (ばかめ・・・・・!)
右の一人が動けば、挟み撃ちの形が崩れ、優位性が失くなる
そんなことにも気づけないのか、と毒づく
右の攻撃は単純だった。全身をばねにするような、諸手突き
真剣で行えば、避けにくく、そしてかわされれば態勢が崩れ、死にやすい
まさに諸刃の剣というべき技だ
右侍 「チェヤぁっ!!!!」
先生 「ハァッ!!」
無造作に、その渾身の突きを払う先生。 ・・・・だが
先生 (手ごたえが・・・・・無い!?)
80 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 02:13:23
ID:083C3Yby0
右の侍は、突きが払われる瞬間、いや、それよりももっと前に力を抜いて
いた
そして、払われる力に逆らわず、そのまま刀をすてる
そして、先生に抱きつくように体当たりを敢行した
先生 「ぐ・・・・なにを・・・・!!」
右侍 「いまだ!! 俺ごとコイツを斬るんだ!!!」
先生 「なにっ!?」
コイツの目的は、これだったのか!
自分が犠牲になり、その代わりに、私を倒す
今までに死んで行った人数と、これから死ぬであろう人数を考えたら
確かに、それは合理的で、確実な方法だ。しかし・・・・
先生 「きっさま・・・死ぬ気かっ!!」
右の侍は、躊躇いなく答える
右侍 「武士道とは、死ぬ事と見つけたりっっっ!!!!!」
答えると同時、左の二人の刀が振ってきた
83 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 02:32:27
ID:083C3Yby0
三人を切り捨てたのは、小柄な男だった
手にもっているのは、巨大な斧・・・いや、あれは槍なのだろうか・・・?
('・ω・`) 「仲間を切り捨てるだなんて・・・・正気ですか・・・?」
??? 「さてね・・・・? ・・・つか、他人行儀だな?」
('・ω・`) 「・・・? 他人に、そういわれる筋合いはありませんが・・・?」
覚えてないのか、と男は寂しげに言い
??? 「まあ、いい。名乗っておこうか、シベリア流、長岡だ・・・!」
('・ω・`) 「・・・!! まさか・・・!!」
長岡 「思い出したか・・・・? 昔はよく遊んだよなw」
ショボンの記憶にある、長岡は、確か・・・・
震える声で、ショボンは尋ねる
('・ω・`) 「なぜ・・・・アナタが・・・毒男と・・・・・・?」
長岡 「決まっている・・・・!!」
長岡 「親父の敵討ちだっ!!!!」
長岡は・・・・十年前の辻斬りの被害者ではなかったか・・・・?
90 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 02:43:27
ID:083C3Yby0
('・ω・`) 「・・・・! だ、だったらなおさらだ!」
「父親の仇は、毒男なんだ!! アナタはだまされている!!」
長岡 「それはこっちの台詞だ・・・・お前こそ、奴に世話になって飼いならされたか?」
('・ω・`) 「違う!! ぼくは・・・そんなんじゃなく・・・・!!」
長岡 「いいから、目を覚ませ!!」
「お前は、あの調査書を見たんじゃないのか!?」
('・ω・`) 「・・・・・・・!」
長岡 「だったら・・・・・・どっちの味方かなんて・・・はっきりしてるだろ・・・・?」
「俺は・・・・お前と共に戦いたい・・・・! 同じ仇を持つものとして!!」
こちらを説得しようとする長岡は、どこまでも真直ぐだった
長岡は、心の底から、共に戦いたいと言ってくれているのだろう
だが、
('・ω・`) 「お断りだっ!!」
長岡 「・・・・・・・もう、何を言っても、無駄か・・・・?」
「それなら・・・・お前を殺す前に教えてくれ・・・・・何故だ・・・・?」
('・ω・`) 「ぼくは・・・・それでも先生を信じているからだ!」
93 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 02:52:06
ID:083C3Yby0
長岡は、うつむき、うなだれ、こう言った
長岡 「おい、お前達。 とっとと消えろ」
手下達 「・・・・え?」
長岡 「とっとと消えろっつったんだよ・・・・!」
手下 「し、しかし・・・・!!!」
グォン!
口ごたえを最後まで聞かずに、長岡は、左手一本で、長斧を振った
地面に落ちる、部下の首は五つ。長岡は、左手一本でそれを行った
長岡 「・・・・あーあ。だから、消えろっつったのによ・・・」
('・ω・`) 「・・・・・・・・・・・」
長岡 「てめぇとは、できればやりたくはなかったんだがな・・・・・」
言って、長岡は、左腕一本で長斧を八双に構えた
長岡 「南蛮直輸入の、ハルバードの錆びにしてやるぜ!!」
98 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 03:02:32
ID:083C3Yby0
長岡は、言うが早いか、遠慮無しにショボンの頭を薙ぎに来た
しゃがんで避けるショボン。しかし、
('・ω・`) 「・・・・・・・!?」
頭が持っていかれそうな程の衝撃が、首に走った
その正体は、高速で振り回されるハルバードが起こす風圧だった
これが直撃すれば、どこであろうと致命傷だ
思わずからだがよろけそうになるが、長岡の追撃は無い
長岡 「謝るんなら・・・今だぞ・・・?」
('・ω・`) 「先生は辻斬りなんかじゃない」
長岡 「・・・・お前は、だまされてるとは思わないのか?」
('・ω・`) 「・・・・ぼくは、先生を信じたい・・・・!!」
そうか、と長岡は呟き、そしてハルバードを振り上げた
101 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 03:07:31
ID:083C3Yby0
振り下ろされるハルバードを見ながらショボンは思った
('・ω・`) (長岡さんは、きっともう一人のぼくだ・・・・・)
ぼくにブーンがいなかったら
('・ω・`) (ぼくも、先生を憎んでいたら・・・・・)
ぼくを先生が救ってくれなければ
('・ω・`) (ぼくは長岡さんの位置に立っていただろう・・・・)
だったら・・・・
('・ω・`) 「ぼくは長岡さんを・・・止めなきゃならないっ!!!」
轟音が、竹林を揺らした
107 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 03:39:28
ID:083C3Yby0
ショボンは、ハルバードの横に立っていた
('・ω・`) 「・・・・・・・・・・・」
ハルバードの下には、刀と小太刀が真っ二つに割れて地面に刺さっていた
長岡 「・・・・・・・・・・・」
長岡の手は、既にハルバードを握っていなかった
そして、ショボンの左手には、昼間のブーンと同じように、鞘が握られていた
ドサっ・・・と長岡が崩れ落ちた
('・ω・`) 「すまない、長岡さん・・・・しばらくそこで眠っててください」
半ばから折れた刀と小太刀を、鞘に差し、ショボンは道場へと向かった
118 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 03:57:53
ID:083C3Yby0
逃げようとしない手下達に、ブーンは一歩踏み出す
手下達 「・・・・・!!!!!!」
その動きだけで、手下達は、恐怖に身を引きつらせた
彼らのリーダーである毒男から、話は聞いていた。コイツは強い、と。
しかし、こうも聞いていた。コイツは人を殺さない、否、殺せない、と。
そう、事実目の前の怪物は、こちらを一人も殺してなんかいない
叩き伏せるだけで、命を奪おうとは決してしていない
しかし
全身が余すところ無く、恐怖している
それは例えるならジェットコースターが怖いのと似ている
安全が保証されている。死ぬことは無い。頭ではわかる。それはわかる
だが、そうであったも怖いのだ
その恐怖が、近づいてくる
123 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 04:08:04
ID:083C3Yby0
近づくブーンは、先ほど自分が立っていた位置までやってきた
そして、先端の穂先の部分がすべて無くなった槍を手に取り
それを薙刀のように構え、
(#^ω^) 「とっとと逃げるお! 逃げない輩はもう一撃くれてやるお!?」
手下達 「・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!」
一喝した
その言葉を待ちわびていたのか、手下達は一目散に
気絶している仲間をおきざりにして逃げていく
(;^ω^) 「やっぱり・・・・こういうのは苦手だお・・・・」
地面に倒れている者達を見て、そう呟く。と、その時であった
ツン 「きゃあああああああああああ!!!!!」
(;^ω^) 「ツンっ・・・・・・!?」
母屋から、ツンの悲鳴が聞こえた。ブーンは全力で、母屋へと走る
124 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 04:19:16
ID:083C3Yby0
ツンが脇差を突きつけた男は、見苦しく騒いでいた
侍1 「た、たすけてくれ・・・・・みんな・・・言うことを・・・!」
ツン 「アタシも・・・・なるべくなら人殺しには、なりたくないのよね・・・・?」
ツンは冷酷そうに舌なめずりしながら、そう言う。だが、内心は全く違う
ツン (この人数相手に、渡り合うのは・・・・アタシには無理だわ・・・)
(少しでも・・・少しでも長く時間を稼げば・・・・誰か来るはず・・・)
(それまで、コイツを生かさず殺さずで、話を伸ばさないと・・・!!)
ツンの目的は、時間稼ぎ
もともと、武器を捨てさせたところで、数が違うのだ
一人二人が命を捨ててかかれば、たやすく自分など捕まるであろう
それだけは、避けねばならない・・・・・
125 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 04:25:40
ID:083C3Yby0
薙刀使い 「・・・・こうなっては仕方が無い・・・」
「あやつの命は、諦めて・・・・・!!」
敵の一人が、はやくも覚悟を決めそうになる
だが、そうはさせない
ツン 「本当に・・・・・・・いいの・・・・・?」
薙刀使い 「・・・・・何がだ・・・・?」
ツンは、おかしそうに笑う
ツン 「ふっふふwww、気づいていないのw?」
薙刀使い 「だから・・・何がだ・・・・!」
相手がイラつくのが、よくわかる。これ以上刺激すれば爆発するだろう
ならば、緩めるだけだ・・・
ツン 「今のこの状態・・・アタシも人質と言えるんじゃない?」
129 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 04:36:20
ID:083C3Yby0
ツンの言う意味が理解できないのか、薙刀使いが疑問符を浮かべる
薙刀使い 「・・・・お前が人質・・・だと?」
ツン 「ええ・・・そうじゃないかしら・・・・?」
ツンは、噛んで含ませるように、説明する
ツン 「・・・貴方は、長物をもっているでしょ?」
「そして、その立ち位置なら、おそらく一歩の踏み込みもいらずに」
「あたしのことを切れるんじゃない?」
薙刀使い 「確かに・・・・」
ツン 「しかも、今私は、こんなお荷物を手に持っているのよ・・・?」
そう言って、脇差を軽く上にあげる。ヒィ、と情けない声を、侍風の男が上げた
ツン 「これを突き放すような動きをしている間に、アナタは確実にアタシを斬れる」
「つまり、それって人質にとったのと同じ状況なんじゃない・・・?」
130 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 04:40:26
ID:083C3Yby0
もちろん、普通に考えれば、そんなわけは無い
これが普通の町娘なら、まだその論は通じるかもしれないが、
相手は仮にも剣術指南役を勤める道場の師範代だ
この程度距離があれば、たやすく逃げ出せるだろうし
それに、ツンの近くには、薙刀がある
武器があって、技術があった、人質を抱えている
そんな人質がこの世にいるはずはない
詭弁にもなっていない、お子様でもだませない、トンデモ屁理屈だ
しかし・・・・
薙刀使い 「・・・・・・・・・・・・」
この男はしっかりと、悩んでいた
132 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 04:50:42
ID:083C3Yby0
ツン (よく言えば、純情な性格よね・・・・・)
悪く言えば単なる考えたらずだが、そのおかげで、ツンは時間を稼げている
うまく行けば、三人が全員ここに来れるぐらい、時間を稼げるかも知れない
と、ツンが思ったあたりだった
「ぎゃあああ!!」 「ぐあっ!?」 「ひ・・・・・・!!!!」
手下達 「・・・・・・・・・!!」
三方から、悲鳴が聞こえた
まずい、このままでは決心をするのにそれほど時間は要らない
ツン 「・・・どうする? アナタの仲間達を救えるかもしれないわよ・・・?」
内心冷や汗まみれになりながら、ツンは強い言葉を吐き続けるが、
薙刀使い 「いや・・・・・もういい・・・・・・!!」
ツン (ちぃ・・・・緊張に負けちゃったか・・・・・!!)
薙刀使いは、構え、そして疾走した
134 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 04:58:32
ID:083C3Yby0
ツンは侍風の男をさっさと手放し、代わりに立てかけておいた薙刀を手に
取る
牽制のために、男の脇差を薙刀使いめがけて投げてから、構える
薙刀 「ふん・・・・・!」
薙刀使いは、あっさりと脇差を払い落とす。想定していた範疇だ。むしろそれを狙っていた
これで、下げられた薙刀は、上にしか斬れない。防御は、下に注意を向ければそれでいい
倒すことよりも、倒されないことに重点を置き、ツンは戦闘を組み立てる
ツン 「さあ、かかってきなさいっ!」
しかし、ここで、ツンにとって予想外の事が起きた
薙刀 「その前に、・・・この無能が!!」
侍 「ぐああああああああ!!!!!!」
ツン 「!!!!! ・・・・・きゃあああああああああああ!?」
ズシャっ!!
薙刀使いの攻撃は、こちらではなく、人質になっていた男へと向けられた
135 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 05:03:14
ID:083C3Yby0
まさか、本当に斬るとは、思っていなかった・・・・・
目の前で、人が斬られた・・・それは、ツンにとって初めてのことだった
ツン (うそ・・・でしょ・・・? あ・・・あんなに血が・・・!!)
動揺し、思わず薙刀を抱きしめるツン
その隙を逃すほどには、薙刀使いは甘くは無かった
薙刀 「死ねええええええ!!!!」
ツン 「・・・・・え、 くぅっ!!!!!!!!」
薙刀による刺突は、ツンの腹めがけて飛んでいった
138 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 05:14:47
ID:083C3Yby0
玄関を土足のまま一気に駆け上がろうとして、ブーンが見たものは
(;^ω^) 「ツンっ!?」
腹を薙刀で突き刺され、そのままこちらへと吹き飛んでくる、ツンの姿だった
ドサァっと土間に、ブーンの後ろに落ちるツンに駆け寄ろうとするブーン・・・
ツン 「ブーン!!」
(;^ω^) 「ツン・・・・・・! ヘい・・」
ツン 「声が出るから、生きてるわよっ!? アタシのことはいいから・・・・!!」
「アイツをぶっ飛ばしなさい・・・・!!」
ツンに止められ、後ろを向くと薙刀をもった男と、十人ほどの男たちがいた
カチ、とブーンの中で、何かスィッチが入る音がした
( ^ω^) 「おまえらかお・・・・?」
薙刀 「我々は復讐のために、この道場に来たの・・・・」
薙刀使いは、最後まで喋れなかった
薙刀 「・・・! ごばぁっ!?」
その口に、ブーンの拳が突っ込まれたから・・・・
142 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 05:22:21
ID:083C3Yby0
薙刀使いには、否、その場にいた全員が見えなかった
ブーンが薙刀使いのところまで移動するのを、確認できなかった
たった三歩ほどの距離だが、それでも見えないはずは無い
まるでコマ落しのフィルムを見るかの様に、ブーンはいきなりそこに存在した
( ^ω^) 「どうでもいいお・・・君達の理由なんて・・・・」
薙刀 「はが・・・・・・はが・・・・・・!」
薙刀使いは、拳を突っ込まれたときにやったのだろう、歯の多くを折られていた
口から血を流し、涙眼で暴れ、痛みを堪えている薙刀使い
ブーンは、その口中から、拳を引き抜いた・・・・・
ただし・・・・・手を中で開いてから
薙刀 「!?!?!?!?!・・・あががあがあああああああっっっっつつっ!!!!!」
手についた血を振り落とし、ブーンは呟く
( ^ω^) 「次は・・・どいつだお・・・・・?」
146 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 05:29:31
ID:083C3Yby0
足元で転がる薙刀使い。その口の中につま先をつっこみ、
ねじりながらブーンは言う
( ^ω^) 「タダジャ・・・オカナイオ・・・・・!!」
突っ込んだ足を軽く捻る
ゴギィン!! と嫌な音を立てて、薙刀使いの顎が外れた
薙刀 「・・・・・・!!! ・・・・・・!!!!!!」
うめく薙刀使いを一瞥もせずに、ブーンは足を進める
部屋の中には、突入するときに得物を交換したのだろう
長物はさっきの薙刀しかおらず、全員刀を装備。それが十人
部屋全体を見回して、一言
( ^ω^) 「死にたい奴から、かかってくるお・・・・・!」
148 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 05:37:28
ID:083C3Yby0
そう言ってかかれるものがいるはずが無い
ブーンの足元で転がるリーダー格は、さっき腕をはたかれた奴よりも
数段、数十段酷い有様だ
誰もが思う。ああはなりたくない・・・・!
( ^ω^) 「なら、こっちからいくお」
侍1 「!?」
ブーンは言葉が終わる頃には既に動き終えていた
部屋の右隅で、刀を構えていた男の眼前に立ち、その顔に手を添えていた
侍1 「くっそ・・・・!! ・・・・・・なっ!?」
腕を動かし、斬りつけようとするが、無駄だった。手が腕の付け根を抑えていた
腕の付け根、顔から移動させて肩、それぞれをブーンは握り、そのまま無造作に・・・・
ゴギっ
侍1 「うううわあああああああっっっっっ!!!!!?!?!?!?」
いとも簡単に外した
153 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 05:46:39
ID:083C3Yby0
ブーンは悲鳴をあげる侍を、まるで興味ない、と言うかのように
適当に放り投げた。それも、外した肩がしたになるように
全員の目が、哀れな犠牲者その二に向けられているそのときに
( ^ω^) 「どこみてるんだお?」
侍2・3・4 「・・・・・・!?」
部屋の対角線で反対側にいた三人の真後ろに、音も立てずに移動する
驚き振り返ろうとしても、それは敵わない
びんたをするような動作で、ブーンは三人まとめて頭をなぎ払った
ゴ、ゴゴン!! と、ちょうど真横を向いた時だったのがいけなかった
三人の頭が互いにぶつかりあい、嫌な打楽器となり、そのままの勢いで床に倒れた
( ^ω^) 「これで五人・・・・・あとは六人・・・・・」
ブーンは、倒れ臥す三人を端に寄せるように蹴飛ばし、部屋中央へ歩いていった
158 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 05:52:58
ID:083C3Yby0
侍5 「う、うわああああああああああ!!!!!!」
ひたひたと近づいてくるブーンの恐怖に負け、真正面にいた一人が
ブーンめがけて刀を突きこんだ・・・が、
( ^ω^) 「・・・・・おそいお」
と、呟き、無造作に上から拳で叩き落した。その瞬間
侍6 「ひ、ひぃぃいいいっつ!!!」
侍7 「やってやるぅ!!」
侍8 「うわああっっっ!!!」
触発されるように、また三人、斬りつけてくる
突き、横面、胴薙ぎ。三者三様、両手だけでは防ぎきれない
162 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 06:04:36
ID:083C3Yby0
しかし、ブーンは動じない
左側から順番に突き、横面、胴薙ぎ
後ろに一歩引き、突きを腹にかすらせる形でかわし、
横面を左手の逆手で引き抜いた、折れた刀の鍔で受け止め、
胴薙ぎは、右の順手で引き抜いた鞘で上から叩き潰した
それらをすべて同時に行い、最後に鞘を使い、
全員の手首に打ち込みを一発づつ、手首のスナップだけで打ち込む
ベギベギベギぃっ!!
侍×三 「・・・・・・・!!!!!!!!」
三人の手首はそれだけで砕けた
( ^ω^) 「これで八人・・・・のこりは三人」
166 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 06:15:37
ID:083C3Yby0
両手に、折れた刀と鞘を握るブーンの姿は、悪夢のように恐ろしかった
ただただ、淡々と、怒りや喜び、そういった感情を欠片も見せずに、
まるでそれが義務であるかのように、破壊をする
これを悪夢といわずになんと言うのであろうか・・・・・
( ^ω^) 「君達は・・・・もうこないのかお・・・・?」
侍×3 「!!」
睨まれた、否、ただ見られた三人は、お互いに集まり、肩を抱き合い
震えながら、何度も何度も頷いた
( ^ω^) 「刀をおいて出て行け・・・・」
侍 「・・・・・・?」
( ^ω^) 「聞こえないのかお・・・・?」
聞き返し、ゆらりとした仕草で、鞘を振りかぶるブーン
侍 「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!」
三人は、刀を放り出し、我先にと何度も転びながら裏口へと走っていった
173 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 06:22:35
ID:083C3Yby0
刀を鞘にしまい、腰に刺してから、ブーンは我に帰った
(;^ω^) 「・・・・・・・!! ツン! ツン!!」
先ほどの歩法はどうしたのか、どたどたと足音を立てて、ツンに駆け寄る
ツンは苦しそうに、息も絶え絶えになっていた
(;^ω^) 「しっかり!!しっかりするお!!!」
がくがくと、必死にゆするブーン・・・と
メゴシャっ!!
(;^ω^) 「ブッフゥッ!!?」
ツン 「あ、・・・アンタね・・・・ゆ、ゆすりすぎ・・・・!!」
( ^ω^) 「ツン!? 大丈夫かお!?・・・・っ!!!」
抱き上げようとしたブーンにツンの拳が再度めり込んだ
175 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 06:32:11
ID:083C3Yby0
けほけほ、と咳き込むツン。それを心配そうに覗き込むブーン
( ^ω^) 「ツン・・・本当に大丈夫かお?」
ツン 「言ったでしょ? 生きてるって・・・・あ、イタタ・・・」
( ^ω^) 「で、でも、薙刀で刺されたお!?」
ツン 「薙刀抱いてたじゃない、アタシ? だから、そっちに刺さっただけよ?」
( ^ω^) 「そ・・・それじゃあ、なんで息が荒いんだお・・・・?」
ツン 「背中から落ちて、息ができなかったのっ!!」
「なによっ!? アタシは苦しんでたのにっ!」
「そんなにアタシを死なせたいのっ!?」
(;^ω^) 「そ、そうじゃなくって・・・う・・・うう・・・」
「本当に心配し、たん・・・だ・・・お・・・・?」
突然泣き始めたブーンに、今度はツンの方が困惑する
ツン 「な、なによっ! ・・・そんなつもりで言ったんじゃないってば・・・」
227 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 15:56:27
ID:083C3Yby0
ツン 「ほ、ほらっ! アタシは平気だからっ!」
ツンはそう言って両手を広げて見せた
確かに薙刀が盾になったのであろう、服には傷一つ無かった
ブーンそれを見てようやく安心する
(;^ω^) 「よ・・・・よかったお・・・」
ツン 「べ、べつにアンタを安心させるためなんかじゃないんだからねっ!」
「いつまでも、こ、ここにいるわけにいかないじゃないっ!?」
と、いつもの照れ隠しで、はたと気づく
ツン 「・・・・! そうよ、お父様達は・・・・!?」
(;^ω^) 「そういえば・・・・・・音がしないお・・・・・」
先ほどから、まったく斬りあう音や悲鳴が聞こえない
つまり、何らかの形で二人とも決着したと言うことではないか・・・
ツン 「アタシ達も行くわよっ!」
( ^ω^) 「わかったお!!」
228 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 15:56:54
ID:083C3Yby0
先生 (万事・・・窮す・・・・か・・・!!)
両腕を抱きとめるように抑えられた今、真上から振り下ろされる
二つの凶刃を、防ぐ手立てなどない
避けることも受けることもできず、先生は目をつぶった
その時
('A`) 「おい・・・てめぇら・・・なに勝手やってくれてんの・・・・?」
ビシュ、ビスっ!!
左侍1 「ぐあっ!!」
左侍2 「ひがっ!?」
先生 「な・・・・・・・・に・・・・・・・?」
道場の入り口が開き、そこから姿をあらわした毒男が、何かを投擲した
二人に刺さったのは、二つに折れた鉄槍であった
('A`) 「よう・・・おっさん・・・? 敵討ちに来たぜ・・・・・?」
先生 「ああ・・・・・久しいな・・・・・・」
229 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 15:57:05
ID:083C3Yby0
右侍 「・・・毒男様・・・・・!!」
「これは・・・・一体どういうことです・・・!?」
先生を未だおさえたままの男が、至極当然な疑問を口にする
目の前にいるのは、標的と知らされた男と、槍で貫かれ倒れている仲間が二人
本来ならば、両者の現状は、逆でなければいけない
('A`) 「は? いや、つか、お前らなんでそのおっさん殺そうとしてんの?」
右侍 「アナタ様の命令でございましょうが・・・・・・!?」
('A`) 「俺の手で始末するって、言わなかったっけ・・・・・?」
右侍 「これだけ仲間をやられて、見逃せと・・・・!」
先生 「やかましい!!」
右侍 「かはっ・・・・・・・!?」
口論をする男のみぞおちに、膝を蹴りこみ昏倒させる先生
('A`) 「あらら・・・話の途中なのに、ひでぇなぁ?」
先生 「こうせねば・・・・・お前が斬っていたであろう・・・・・」
('A`) 「くくく・・・・w全部お見通しってわけかwwww」
230 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q [sage] 投稿日: 2005/11/21(月) 15:57:20
ID:083C3Yby0
先生 「どうする・・・・?」
先生は、突き刺してあった刀を引き抜き、尋ねる
('A`) 「何がだ?」
先生 「今、ここでやるか・・・・?」
('A`) 「くくくww・・・・それじゃあ、復讐にならねぇだろ・・・?」
「俺の手下達が、お前の弟子を連れてくるまでまとうじゃねぇか・・・?」
そう言って毒男は血まみれの道場に腰を下ろし、背中を見せ
懐からキセルを取り出し一服する姿は、くつろいだ物だった
あまりに隙だらけの毒男に、先生は近づく、が
('A`) 「やめなよ・・・・?」
先生 「・・・・・・・・・・」
('A`) 「今のアンタと俺じゃあ、たとえ後ろからでも勝負は見えてんぜ?」
悔しいが、おそらくその通りだ・・・
どこから打ち込んでも、毒男はいとも簡単に止めてしまいそうに思えた・・・
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