第四話
235 名前: 1
投稿日: 2005/11/15(火) 06:12:13 ID:RXIF575q0
ツンは想い出に逃避していた
一体いつからだろう?ブーンのことをここまで愛しく想い始めたのは・・・?
そうだ、あのときだ
ショボンの母親の実家へ向かった時だ・・・・
266 名前: 1
投稿日: 2005/11/15(火) 12:26:09 ID:RXIF575q0
ショボンの母の実家は、大人の足で三日ほどかかるところだった
子供づれの旅では五日、馬を使えば二日と言ったところだろう
ブーンたちは馬など持ってはいない。当然徒歩の旅だ
しかし、ソレはショボンの母たちもおなじだ
ブーンたちは一行にショボンもいると考えて、そう判断したが
財産を根こそぎ持っていくのである。どの道子供づれと変わらぬ速度しか出ない
ブーンたちはショボンの母親と一日遅れで町を出た
準備に時間がかかった、というのもあったが
道中で追いついてもまた同じ問答を繰り返すだけだと思ったからだ
それならば実家に着き、腰をすえて落ち着いたところでの直談判がよいだろう
この判断のせいで、ショボンとの再会は、半月遅れる事となる
269 名前: 1
投稿日: 2005/11/15(火) 12:41:09 ID:RXIF575q0
( ^ω^) 「先生、もう少し急がなくていいのかお?」
先生 「・・・・さっきからそればかりだな?・・・・あまり急いでも仕方がない」
ツン 「そうよっ! ・・・・またあの小母様のテンプレ回答が聞きたいの?」
(;^ω^) 「わかってるお・・・でも・・・・」
ブーンは終始この調子であった
何かに焦り、落ち着きなど普段から無いが、今は余裕すらない
ソレはツンの知らないブーンであった
ツンの前では、ひたすら格好をつけよう、いいとこを見せようとするのに・・・
ツン (それだけ・・・・・ショボンのことで頭が一杯なの・・・・?)
何故か、歯軋りをしていた。無意識の内であった
( ^ω^) 「? ツン、どうしたお? 足でも痛いお?」
ツン 「な、なな、なによっ!? 別に、何でもないんだからっ!!」
( ^ω^) 「でも、すごい顔してるお?」
ツン 「ピキッ!・・・・・・・ねえ、すごい顔って・・・・・・・・どういうこと?」
(;^ω^) 「!!!!いあいあっ!? そうじゃないお!!ただ・・こう・・・」
ツン 「うるっさいっっ!!こおの馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿っ!!!!あたしの気も知らないで!」
(;^ω^) 「ちょwwwwwwwwテライタスwwwwwwww」
「ツンの気持ちって・・・なんだお? 」
ツン 「!!! う、うう、ううっうるっさいってば!! 関係ないでしょっ!?」
( ^ω^) 「ボコられてる時点で関係大有りだお・・・」
「でも、ごめんお・・・・今は・・・・ショボンのことで」
ツン 「頭が一杯?」
遮る言葉は、何故か苛立っていた
270 名前: 1
投稿日: 2005/11/15(火) 12:51:37 ID:RXIF575q0
ツン 「・・・・・ふーん・・・・そうなんだ・・・・・」
( ^ω^) 「・・・・ツン?」
ツン 「うるさいわねっ!? 話し掛けないでくれるっ!?」
( ^ω^) 「ごめんお・・・・・本当にごめんだお・・・・」
フイっと顔をそむけるツン
今は、ブーンの顔を見れない。見れば目からなんか出そうだ
いつも、ブーンはツンのことばかりを考えていた
少なくとも本人の目の前ではそうだった
何をするでもツンの目を気にし、ツンの機嫌を損ねないか気にしていた
もっとも、気にしても機嫌を損ねることは多々あったけれど・・・
こんなことは、今まで無かった
ツンにしてみれば、面白くなかったのだ。他の事考えるブーンが
下僕と主人とでも言うべき関係のつもりだったのかもしれない
出来のいい姉と出来の悪い弟のつもりだったのかもしれない
下僕であろうと弟であろうと、一番は彼女であることは変わらない、そう思っていた
しかし、今目の前のブーンは、はっきりとツンの降格をつげていた
271 名前: 1
投稿日: 2005/11/15(火) 12:57:28 ID:RXIF575q0
今はショボンのことで頭がいっぱい・・・・・
あれだけの事が親友に起きたのだ。そうなっても仕方が無い・・・・・
ツンの理性はそう告げる
どんなときでも、アタシを見て欲しい、一番でいさせてほしい・・・・
ツンの感情はそう泣き叫ぶ
今まで、こんなにもブーンを意識したことなんて・・・・なかった
それはツンの女王様気質の独占欲のせいかもしれない。恋などではないかもしれない
錯覚かもしれない、勘違いかもしれない、逆に憎しみを取り違えているのかもしれない
しかし、そのどれであってもツンの心が千々に乱れることは変わらなかった
276 名前: 1
投稿日: 2005/11/15(火) 13:21:18 ID:RXIF575q0
ツン 「だったら・・・・・・・ショボンと結婚しちゃえばいいじゃな
い・・・・・・・!」
( ^ω^) 「ツン? 何か言ったお?」
ツン 「# うるさいっ! 独り言よっ!! 聞いてんじゃないわよっ!?」
誤魔化すようにブーンを叩く。ボコボコと
(;^ω^) 「ちょ、痛いお!? グーは痛いお? ・・・!! 石っ!石はだめ!」
ツン 「・・・・・・・・・・・・・・・・ふんっだ!」
道中の一日目。動かなくなったブーンを先生は背負う羽目になっていた
278 名前: 1
投稿日: 2005/11/15(火) 13:32:22 ID:RXIF575q0
宿につく頃、ブーンは目を覚ました
(;^ω^) 「石は〜石はだめ〜・・・・脳が〜脳がいてぇ〜・・・・」
訂正、目覚めてなかった。むしろやばかった
先生 「今日はここで宿をとろう」
ツン 「はい、お父様」
先生 「・・・・ツン、ブーンのことはゆるしてあげなさい」
ツン 「・・・・許すもなにも、アタシは・・・・・」
先生 「・・・私もシャキンが死んで、この有様なんだよ・・・・・」
そういう先生は、隈の出来た目を指差した
昔、先生は言っていた。ブーンとショボンはまるで幼い頃の私たちみたいだ、と
晩酌の酒のせいもあってか楽しそうに笑い、なつかしそうに微笑んでいた
親友の死は、厳格で、偉大で、力強いはずの父をここまで追いやるほどの衝撃だった
まだ幼いブーンにとって、苦しむ親友に会えない辛さは、今の父が感じているものと
どれほどの違いがあるのだろうか?
それは、ツンにも、理解は出来ていた・・・・・・・
279 名前: 1
投稿日: 2005/11/15(火) 13:46:21 ID:RXIF575q0
だが、理解と認めるとには大きな隔たりがある
いくら、父がその身をもって教えようとしたところで、
ツン 「・・・・・あたしは、それでも嫌なの・・・!」
先生 「・・・・・・・そうか・・・」
認められるわけがなかった
(;^ω^) 「きっと空も飛べるはず! I can fly !」
ツン 「どこに飛び立つつもりなのよ?」
(;^ω^) 「あれ・・・? なんでツンがいるお? それより脱出装置は?」
「エリアVIPは? ここは? どこだお?」
ツン 「・・・・・・石、まだ欲しいの?」
(;^ω^) 「! す、すべて思い出したお!」
ツン 「そう、ソレはよかった・・・ 人殺しにならずに済んだみたいね?」
(;^ω^) 「寝ぼけただけで死亡フラグかお!?」
ツン 「馬鹿言ってないで、服着替えたら?」
( ^ω^) 「ん? 今日はここに泊まるのかお?」
「先生はどこだお?」
ツン 「お父様なら、近くの飯屋に行くって言ってたわ・・・・多分飲んでるんでしょ」
( ^ω^) 「・・・シャキンさんのこともあったんだし、仕方ないお」
ツン 「そうね・・・・でも、まだ日のあるうちに行くのはどうかと思ったわ」
283 名前: 1
投稿日: 2005/11/15(火) 13:56:27 ID:RXIF575q0
外を見ればもう真っ暗
少なくとも日が落ちてから半刻はたっているようだった
( ^ω^) 「僕はずっと寝てたのかお?」
ツン 「流石に死んだかと思ったわよ?」
( ^ω^) 「そうじゃなくって・・・・ずっといてくれたのかお?」
ツン 「ーーーーーっ! だ、だだっ! だってあたしのせいでさ!」
「ほら!それで死んだりされたら、こう、あれじゃない?寝覚め悪いじゃない!?」
( ^ω^) 「心配・・・・してくれたのかお・・・・・・?」
ツン 「ばばば、ばっかじゃないのっ!? か、勘違いもいいとこだわっ!」
ブーンは、ムキになって否定するツンに、ほんの少しだけ顔を曇らせた
それはツンの心に突き刺さる仕草だった
ツン (ちがうのっ!ほんとうは、すごく心配だったの・・・)
(傍にいたかったの・・・・! こんなこと・・・言うつもりなんかじゃないのに・・・)
ツンの気持ちを他所に、ブーン姿勢をただし、ツンに深く頭を下げた
( ^ω^) 「ありがとうだお」
ツン 「ブーン・・・・」
( ^ω^) 「それと・・・ごめんだお・・・」
288 名前: 1
投稿日: 2005/11/15(火) 14:07:09 ID:RXIF575q0
ツン 「ちょ・・? 何頭下げてんのよっ!? 謝られる理由がない
わ!」
ツンにしてみれば、今謝るべきは自分であって、ブーンが謝る必要などどこにも無い
( ^ω^) 「こんな旅につき合わせて、すまないお」
ツン 「なに・・・・言ってるのよ・・・? 私は、お父様についてきてるだけ・・・」
( ^ω^) 「それでも、僕が残ると言えば、ツンは向こうにいられたお?」
そこでツンは思い出す。出発前のやりとりを
先生 「ブーン、君もついてくるか?」
( ^ω^) 「当たり前だお! ショボンに絶対会うお!」
先生 「そうか、なら、ツンもつれて行かないとな」
そういうと、先生の影から、旅支度を整えたツンが顔を出した
ツン 「感謝しなさい? あたしもついって行ってあげるんだから!」
( ^ω^) 「ツンもくるのかお!?」
ツン 「何よ? 迷惑?」
( ^ω^) 「いや、そうじゃないお・・・ただ結構道中はあぶないお」
290 名前: 1
投稿日: 2005/11/15(火) 14:11:12 ID:RXIF575q0
先生 「ま、わたしもブーンもいるんだし、平気だと思うがな」
(;^ω^) 「で、でも先生・・・・」
先生 「お前がこっちにいてくれるんなら、二人で留守をたのんだとも」
「だが、お前も来るのだったら、ツンを一人にはして置けないだろ?」
こいつは寂しがり屋だからな、と先生はつけくわえるように笑い
ツンを顔を真っ赤にして先生をしばき倒していた
ブーンはそのことを気にしていた・・・・
370 名前: 1
◆3mfWSeVk8Q 投稿日: 2005/11/15(火) 23:11:15 ID:RXIF575q0
ブーンの気遣いを知り、ツンの心に芽生えた感情は
怒りだった
ツン 「#・・・・・ちょっと、あんた・・・・何様のつもり・・・!?」
(;^ω^) 「ちょ・・・何を怒っているお・・・・?」
ツン 「うるさいっ!!」
バシィンっ!
ツンはブーンの頬を思いっきり張り飛ばした
(;^ω^) 「い、いたいお!?」
ツン 「アタシのプライドはもっと痛かったわよっ!?」
ブーンは日中に、確かにこう言った
ツン 「今はあれでしょっ!? ショボンの事が一番心配なんでしょっ!?」
自分ではなく、親友の男の子が心配だと、そう言った
377 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q
投稿日: 2005/11/15(火) 23:21:07 ID:RXIF575q0
ふざけている、ツンはそう思った
ツン 「ソレなのに、あたしのことを心配なんかすんなっ!」
自分を一番に思えないようなところで
どこかの誰かに負けるようなところで、自分のことを考えるということは
ツン 「アタシを・・・・! 二番目なんかにすんなっ!!」
自分が、ブーンの一番じゃないと言うことではないか
(;^ω^) 「でも・・・・!」
ツン 「口ごたえするなっ!!」
殴りつけるような勢いで、ブーンの胸倉をつかむ
興奮のせいか、目が潤みはじめる
ツン 「アンタに心配されるほど、落ちぶれちゃいないわよっ!」
(;^ω^) 「でも・・・! でも・・・・・!!」
382 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q
投稿日: 2005/11/15(火) 23:36:40 ID:RXIF575q0
なおも心配だ、と言おうとするブーンに、ツンの中で何かのスィッチが
入った
ツン 「アンタがアタシを心配することはっ!! 今後絶対に許さない!!」
(;^ω^) 「・・・・・っ! でも!!」
ダンッ!!
壁に、ブーンを思いっきりたたきつけ、言葉を封じる
ツン 「心配してるのはアタシの方なのよっ!?」
( ^ω^) 「!!!!???」
感情が爆発する。言葉が止まらない
ツン 「アンタが誰を心配しようと、どうでもいいっ!!」
「でも!! アタシはアンタを一番心配するっ!」
( ^ω^) 「ツン・・・・・」
ツン 「何っ!? 文句でもあるのっ!? ・・・だったら」
それは・・・初めてブーンにぶつける本心だった・・・・
ツン 「他のやつなんか、心配すんなっ!!!!」
385 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q
投稿日: 2005/11/15(火) 23:46:47 ID:RXIF575q0
後は言葉になんてならなかった
ブーンの胸のすがりつくように顔を押し付け
しゃくり上げるような泣き声をだすだけだった
ブーンは、そんなツンの髪をなではじめた
( ^ω^) 「ツン・・・・本当に、ごめんだお」
ツン 「・・・ぅぐっ、ひぐっ・・・・しん・・・ぱい・・すんなぁ・・・!!」
( ^ω^) 「いやだお」
ブーンはきっぱりと拒否した
ツン 「・・・ぇぐっ・・・ば・・か・・!! ・・ばか・・ぁ・・!!!」
( ^ω^) 「やっぱり、ぼくはツンが一番心配だお・・・」
ツン 「・・・・・ぇ・・・・・・?」
( ^ω^) 「ツンに、心配なんかさせたくないお」
「そんなツンを・・・きっと、他の誰よりも心配しちゃうお・・・」
388 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q
投稿日: 2005/11/15(火) 23:57:58 ID:RXIF575q0
( ^ω^) 「他の誰かを心配するとき」
「ツンがぼくを心配するなら、そのときはツンが一番心配になるお」
ツン 「ブーン・・・・・」
( ^ω^) 「昼はわるかったお・・・・・・・」
ツン 「・・・・・・」
( ^ω^) 「ショボンも大事だけど、それでツンをないがしろしていいわけがないお」
ブーンの手は、いつのまにかツンを抱きしめていた
( ^ω^) 「これからは、絶対にあんなことは言わないお」
ツン 「・・・・・・・・・・」
( ^ω^) 「だから・・・・・ツンも心配しないでほしいお・・・」
腕の中、ツンがふるえる
( ^ω^) 「ツン・・・・・・?」
398 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q
投稿日: 2005/11/16(水) 00:06:20 ID:lAWfXJyW0
ツン 「あったりまえでしょーがっ!!!!!」
ベチィっ!!!
腕を弾き飛ばすように、ツンが両手を挙げて立ち上がる
そのついでにブーンの顎に頭があたったが、全く答えた様子はない
(;^ω^) 「え? え? え?」
ブーンの前に仁王立ちをするようにたつツンの顔に、もう涙はない
いや、むしろ笑っている
ツン 「そうよねぇ・・・・! アンタがアタシを心配するのも言語道断なのに・・・!」
「それどころか、昼間はとんでもないことを・し・た・わ・よ・ね・!?」
(;^ω^) 「いや、ツン、その・・・なんか展開がおかしいお!?」
ツン 「いいことっ!?」
(;^ω^) 「い、イエス・マム!!」
404 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q
[sage] 投稿日: 2005/11/16(水) 00:21:01 ID:lAWfXJyW0
米国海軍バリのきびきびとした敬礼をするブーンに、ツンは指を突きつけ
る
ツン 「アンタはアタシを常に、一番心配しなさいっ!」
(;^ω^) 「イエス・マム!」
ツン 「アタシはアンタの心配を常にするからねっ!?」
(;^ω^) 「イエ・・・・・・! のののの、ノー・マム!」
ツン 「拒否はゆるさないっ!」
「アンタは人の心配してるときが、一番危なっかしいのよね・・・・」
「だから、アンタが人の心配をしているときは、アタシがアンタを心配する」
( ^ω^) 「・・・・・・・・・ツン」
406 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q
[sage] 投稿日: 2005/11/16(水) 00:29:43 ID:lAWfXJyW0
ツンが言い切ると、ブーンはなんとも幸せそうな笑顔をツンに向けていた
その笑顔で急に我に帰ったツンは
ツン (ちょっ!? あ、ああああ、アタシッてば一体全体なんてこと口走って!!!)
興奮したときのテンションの高さに比例して、恥ずかしさも二倍三倍と跳ね上がる
ツン 「かかっか、勘違いするんじゃないわよっ!? そ、そうね? うん!」
「アタシたちって、っかかかか、家族みたいなもんじゃないっ!? だから!そう!だから!」
(;^ω^) 「そ・・・そうなのかお・・・・・・?」
ツン 「そうなのよっ!! 家族愛ってやつなのよっ!!」
(;^ω^)・ツン 「・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・」
他の人間から見れば、ばればれな照れ隠しのごまかしを
言った本人のツンとあっさりと誤魔化されたブーンは、同時に肩を落とした
部屋の入り口では、先生がなんとも入りにくそうに佇んでいたのには
誰も気づかなかった
411 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q
[sage] 投稿日: 2005/11/16(水) 00:56:44 ID:lAWfXJyW0
子供1 「ツン先生・・・・?」
生徒の一人の声で、ツンはビクリと現実に引き戻された
跳ね起きるように立ち上がり、悟られぬようさりげなく涙をぬぐう
ツン 「ど、どうしたの・・・? 何かあったの?」
道場の師範代を勤めるものとして、生徒たちの模範たらねばならない
その意識がツンの頭を切り替えさせる
子供1 「ショボン先生も大先生もいなくなっちゃって・・・・・」
ツン 「だったら・・・」
ブーンが行ったはず、と言いかけて、その言葉を飲み込む
ブーンが行っているわけがないのだ
つい、心地いい思い出に浸りすぎて、なかなかそこから抜け出せない
頭を振り、もう一度、意識を切り替える
ツン 「なら、私が今から行きます。すぐに準備できますから、キチンと待っていなさい」
子供1 「はーい・・・・・と、そういえば」
413 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q
[sage] 投稿日: 2005/11/16(水) 01:07:06 ID:lAWfXJyW0
道場への廊下へと出ようとしていた少年は、何かを思い出したかのように
くるりとこちらを向く
ツン 「どうしました?」
子供1 「ツン先生、ブーンはどこ行っちゃったの?」
ツン 「・・・・・っ!」
不意に出されたその名前に、ツンの心臓は一瞬停止した
そのぐらい、ツンには衝撃的なタイミングであった
ツン 「か・・・帰ったのを・・・知っていたの・・・・?」
子供1 「うん! ・・・ていうか、そこの壁見れば誰でもわかるよ?」
少年が指差すところには『方』の形に穴の空いた漆喰の壁だった
なるほど、そんな穴をあけるのはブーン以外にいるはずもない
ぐらぐらと、師範代としての仮面が揺らぎはじめる
ツン 「そうよ・・・・ね・・・」
子供1 「・・・・ツン先生、またブーンと喧嘩したの?」
ツン 「・・・・・・・・・・・・」
418 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q
[sage] 投稿日: 2005/11/16(水) 01:21:36 ID:lAWfXJyW0
何も言えなかった。呆れたような少年の口調は、決して責めているわけで
はない
にも関わらず、静かなその声は、容赦なく心をさいなみ、引き裂いていく
子供1 「・・・・は〜あ、今度は何? この前は・・・なんだっけ・・・」
「ショボン先生と出稽古に行くことを内緒にされたんだっけ?」
「まったく、男相手に嫉妬してどうするのさ? ・・・って、今回は違うのか・・・」
ツン 「そうね・・・・今回は、そんなんじゃないわ・・・・・!」
ショボン。その音は、今度は別の意味でツンの心に突き刺さる
我知らず噛んだ唇から、たらりと血が流れる
子供1 「・・・? ・・・そう言えば、旅に出てたんだよね・・・?」
「・・!! ああ、ツン先生! 絶対! 絶対ソレはないよ!?」
ツン 「え? え? ちょ・・・・どうしたの・・・? 落ち着きなさい?」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、必死の形相で訴える少年に、ツンはうろたえる
421 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q
[sage] 投稿日: 2005/11/16(水) 01:34:18 ID:lAWfXJyW0
子供1 「ぜったいだよっ!? どう考えても、ありえないもん!!」
飛び跳ねながら、止めようとしているのか、しがみつこうとしているのか
それとも胸を揉もうとしているのか、よくわからない動きをする少年
三つ目だったときのためと、そう誤解を招きかねないことをするとどうなるか
教えるためにも一度殴っておいた方が良いかと腰を落とそうとした時
子供1 「ブーンが浮気なんかするはずないもん!!」
道場まで聞こえるのでは、というほどの大声で叫んだ
ツン 「・ ・ ・ ・ ・ はぁ?」
あまりにも的外れなそのシャウトに、思わず毒気をぬかれる
子供1 「・・・・・・・・・・・・・・・・違うの?」
ツン 「ぜんっぜん、違うわよっ!!」
子供1「だって、唇から血が出るような顔してるんだよ?」
「他の可能性なんて考えられないって!!」
ツン 「いや・・・・そこまで断言されても困るんだけどね・・・・」
子供1 「あ! そうだよね、そんなことだったらそこらにブーンが転がってるもんね」
「早とちりだw」
ツンが子供たちに抱かれている印象は、思いのほかバイオレンスなご様子
429 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q
[sage] 投稿日: 2005/11/16(水) 01:54:44 ID:lAWfXJyW0
ツン 「そんなんじゃないわ・・・・ちょっと、私が酷いことを言っ
ちゃっただけ・・・」
自分自身への嫌悪感が顔をゆがめる
酷いことと分かっていながら、何故そんなことを平気で口に出来たのか・・・?
どれだけ、無責任な照れ隠しでブーンを傷つけてきたのか・・・?
思い出の中ですら、何度そう思ったか数え切れない
それでも反省を活かせない自分が・・・・・・・・・・・・・にくい
子供1 「なーんだ・・・・それじゃ大したことじゃないじゃん?」
「つまんねーw」
ツン 「えっ・・?」
今、この子は何て言った? 大したことじゃない? アタシがこんなに苦しんでいるのに?
いや、そもそもその後のつまんねーってなに? やっぱりここらで殴るべき?
子供1 「ブーンがツン先生を嫌うわけないじゃんw」
「修羅場でも何でも無いしwつまんねーw」
431 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q
[sage] 投稿日: 2005/11/16(水) 02:09:55 ID:lAWfXJyW0
からからと笑う少年の顔には、慰めやごまかしの色はない
本心からそう思い、否、思う必要すらないほど常識なのだろう
ツン 「で、でもね?・・・アタシには婚約者のショボンがいるのよ・・・・?」
お父様が勝手に決めた、の一言は、口に出さない
こんな子供に当り散らしたくはない。それに、今は関係ない
子供1 「?それがどうしたの?」
ツン 「# だから、武家の妻がね? 夫以外の人を好きになったらまずいでしょ?」
夫となるであろう人の顔を思い浮かべる
真面目で、責任感が強くて・・・・・・・・それだけの人物の顔を
自分は、彼を愛せるのだろうか? ソレはいつも考える。だが、今は関係ない
今、知りたい答えは・・・・・
子供1 「? ・・・・それって、ブーンの気持ちになんか関係あるの?」
433 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q
[sage] 投稿日: 2005/11/16(水) 02:21:16 ID:lAWfXJyW0
カシャン、と、胸の奥で何かが壊れる、あるいは崩れる音が聞こえた
それは門だったのかも知れない、それは鎖だったのかもしれない
それは常識というものだったのかもしれない、それは疑いというものだったのかもしれない
そのどれでもあり、どれもが不正解なのかもしれない
だが、どうでもいい物だということだけは、確かだ・・・・!
ツン 「あは・・・・ははは・・・・あははははははははwwwwwwww」
ツンは笑った。思いっきり、笑った。おかしすぎて涙がでるほどに
何を自分の殻に閉じこもっていたんだろう?
何を意味のないルールを作っていたのだろう?
くだらない、くだらない、ほんっとうに、くだらない!
子供1 「ツン先生・・・・?」
ツン 「うん・・・・うんうん・・・! ・・・・ありがとう。おかげですっきりしたわ」
少年の言葉に適当に返事をし、柔軟体操をその場で始めた
434 名前: 1 ◆3mfWSeVk8Q
[sage] 投稿日: 2005/11/16(水) 02:35:11 ID:lAWfXJyW0
ツン 「よっし! さ〜て、あんの大馬鹿をとっちめてやるんだから
ねっ!」
最後にアキレス腱と肘を同時に伸ばして準備は完了
子供1 「・・・・って、ツン先生はどこに行くのさ?」
ツン 「ん〜? 適当に走ってれば、向こうから出てくるんじゃない?」
子供1 「適当って・・・・」
ツン 「いいのいいのw ・・・少し、自分に素直になろうと思ってね」
「最後に飛ぶための助走だと思えば軽い軽いw」
子供1 「すなおって・・・! うっはーwwまじで!? 」
「そうだよ、ツン先生は素直になった方がいいよww」
(これはショボン先生と大先生がだまってないぞ〜wwww)
ツン 「###・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
くすくすと押し殺して笑う少年の声に、『方』から出ようとしていたツンが足をとめた
くるりと振り向く姿はさっきの少年のように。すたすたと少年に近づくと、
ツン 「そうね? いきなりだときつそうだから、ここらで少しだけ素直になっておくね♪」
子供1 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」
しばらくお待ちください ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ツン 「待ってなさいよー! ブーン!!」
道場の方はあえて描写しません
戻る 進む