第一話

18 名前: 以下、名無しにか わりましてVIPがお送りします 投稿日: 2005/11/13(日) 22:50:45 ID:u/S123ws0

旅姿のブーンは大きな風呂敷を担ぎ、住み慣れた故郷の町を歩く
目的地は幼い頃から、我が家のように思っている道場。

( ^ω^) 「久しぶりに道場に帰ってこれたお」
子供1 「あ、ブーンだ!」
( ^ω^) 「久しぶりだお」
子供2 「うわ、でっけえ風呂敷!ねぇねぇ!それ、お土産?」
( ^ω^) 「・・・ごめんだお、これはお土産じゃないお。今日は何もないんだお」
子供1・2 「つまんねー!」


( ^ω^) 「先生、今帰りましたお」
先生 「・・・ブーンか。して、成果の方は?」
( ^ω^)「は、これに」

担いでいた風呂敷の中には、大刀が七振り、小太刀が三振り。そのどれも が赤黒い何かで汚れていました

19 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし ます 投稿日: 2005/11/13(日) 23:03:25 ID:u/S123ws0

先生 「・・・ふむ、一月足らずで十人か」
( ^ω^) 「・・・・・・・」
先生 「まぁまぁ・・・だな」
( ^ω^)「先生!これでもまだ足らぬと仰いますかお!?」
先生 「ブーンよ」

いきり立ち、詰め寄らんばかりのブーンを、先生は一睨み。

(;^ω^)「し、失礼・・しましたお・・・」
 
頭を下げたブーンはガタガタと震えていた

先生 「ふん。この程度で気圧されるとは情けない・・・。そんなことだから一人も殺せないのだ」
( ^ω^) 「・・・!!」
先生 「鶏と人の血、匂いだけでわかる・・・」
( ^ω^) 「で、でも!殺せとは言われていないお!」
先生 「刀を奪えとは・・・・そういうことであろう?」

20 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし ます 投稿日: 2005/11/13(日) 23:19:08 ID:u/S123ws0

先生 「ソレが解かっていたから、このような小細工をしたのであろ う?」

悪戯をする子供のような笑いを浮かべ、先生は小太刀についた鶏の血を指した

(;^ω^)「・・・・・・・・」
先生「しかし、わからぬ・・・・」

ため息にも似た吐息混じりの呟きであった

( ^ω^) 「なにが、わからないんですかお?」
先生 「武士の魂である刀。ソレを生きながらに奪うということは、殺すよりも難しい」
     「正直・・・お前にそれほどの腕があったとは驚きだ」
     「せいぜいが、一太刀で相手を殺す程度だとばかり思っていた」
( ^ω^) 「・・・先生の、御意志が、わからなかったからだお・・・」
先生 「ん?なにがだ?」
(#^ω^) 「全部だお!! 突然の刀狩の言いつけ! ツンお嬢様の縁談!!」
       「一体全体、なんのためなんですかお!?」
先生 「口が過ぎるぞ」

先刻と同じ、刺す様な、否、貫くような視線が、ブーンを襲った
だが、ブーンはひるまなかった

(#^ω^) 「過ぎようと何だろうと言わせてもらうお!! 先生、あなたは・・・!!」

26 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし ます 投稿日: 2005/11/13(日) 23:35:02 ID:u/S123ws0

ブーンが立ち上がりかけたその時、母屋に繋がる戸が開いた

ツン 「あら?ブーンじゃない。帰って来てたの?」
(;^ω^) 「お、お嬢様・・・お久しぶりですお・・・」
先生 「お、おお、ツンか」

予期せぬ闖入者に、ブーンは居住まいを正し、深々と頭を下げた
それは先生も同じようで、数瞬前までの裂帛の気勢は雲散霧消していた

ツン 「久しぶりに来たんだから、すぐに道場の方に来なさい」
(;^ω^) 「・・・え?いや、でも、まだ先生と話があるお・・」
ツン 「なぁに!? アタシの言う事が聞けないって言うの!?」
(;^ω^) 「いや、でも・・・というか、なんでそこまでムキになるお?」
ツン 「なっ!!か、かか勘違いしないでよね!?お、お父様もこっちにいるじゃない!?」
    「だだ、だから!そう!だから!!」
( ^ω^) 「何がだからなんだお?」
ツン 「〜〜〜〜〜〜っ!!さ、察しなさいよ!?指導する人が足りないからよ!」
( ^ω^) 「だったら先生に頼んでも同じだお?」
ツン 「ーーーーーーっ!!」

ツンが何かまた叫ぼうとする寸前

先生 「やかましくてかなわん!」
(;^ω^)・ツン 「・・・・・・・・・」

30 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし ます 投稿日: 2005/11/13(日) 23:45:49 ID:u/S123ws0

先生のその一声は、道場の物音までかき消し、
そのまましばらくは物音がしなくなるほど、迫力があった

先生 「もうよい」
( ^ω^) 「へ?」
先生 「話はもうよい、と言ったのだ」
(;^ω^) 「いや、話があったのは僕のほうだお・・・・?」
先生 「・・・・#  ブーンよ。今はツンの用事を先に片付けよ」
( ^ω^) 「いや、その前に先生との話の片をつけるお」
先生 「〜〜〜〜っ!!」

こんなところではきっちり親子。先生がなにごとか叫ぶ直前、ツンが会話を断ち切る
先のツンとの会話を見事に逆転させる展開であった

ツン 「ほほほほ、ほーら!!お、お父様の許可も出たんだし!!はやく!はやく道場へ!」
( ^ω^) 「?・・・二人とも様子がへんだお?」


廊下にて
ツン 「あんた・・・・つまんないことで死ぬタイプよね・・・・」
(;^ω^) 「ちょwwwwwww不吉すぎwwwwwwwww」

お前の言動が一番不吉である

31 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし ます 投稿日: 2005/11/13(日) 23:59:12 ID:u/S123ws0

客間と道場は母屋を挟んだ位置にある
玄関→客間→母屋→道場。といった配置だと思えばいい
ツンは母屋で立ちどまり、後ろを歩くブーンも止めた

( ^ω^) 「あれ? ツンどうしたお? 道場に行かないのかお?」
ツン 「ん? 道場? ショボンさんもいるんだし、別に行かなくても良くない?」 
(#^ω^) 「会話を中断した意味はどこだお・・・?」
ツン 「・・・あんた気づいてないの?」
(#^ω^) 「一体なにがだお!?大切な話の途中だったんだお・・・!?」

熱を帯び始めたブーンの声に対し、ツンの声は冷ややかであった

ツン 「あんた、あそこで立ち上がっていたら、斬られてたわよ?」

それはブーンの頭を冷やすのには十分な温度だった

あの時、刀は右手側、すぐには抜けない位置に置いてはいなかったか?
あの時、先生の手には小太刀が握られてはいなかったか?
あの時、先生の発していた気は、闘気ではなく、殺気ではなかったか?

(;^ω^) (・・・思い出しただけでも、汗がとまらないお)

33 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし ます 投稿日: 2005/11/14(月) 00:09:29 ID:xqb0AGcZ0

ツンの言葉に大きく動揺したブーンであったが、しばらくすれば疑問も浮 かぶ
確かに、隙は十分すぎるほどにあったと思う
しかし先生は、既に老齢と言って差し支えがなくなるようなお歳だ
年齢と、それに比例する反射、体力で負けることはない
いや。武器の有無と腕前を、もしかすれば上回れるかもしれない程度に勝っている

つまり、先生にとっては十に一つは負ける可能性がある状況だったのは間違いない

そして、動機もない。ブーンはそう、確信めいたものを感じていた

( ^ω^) 「いや、でも、先生がそこまでする理由がないお?」
         「僕も先生に及ばないまでも、数少ない免許皆伝の身だお?」
         「たかが口論程度で・・・・・」

後継者候補を切り捨てるわけがないお。そう、言おうとした
しかし、言葉は、ツンの言葉で遮られた

ブーンがもっとも聞きたくない言葉で

ツン 「後継者なら代わりがいるじゃない? アタシの婚約者のショボンさんが」

37 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし ます 投稿日: 2005/11/14(月) 00:22:20 ID:xqb0AGcZ0

婚約者。恋をする者に、これほどまで絶望を与える言葉があるだろうか?
この時代、親の、または家の決めた婚約を破棄することなど、当人の意志ではどうにもならない
いくら互いに好き合っていても、いくら婚約に異議があろうとも、
覆ることなど、そうそうあるものではない

だが、ブーンは

(#^ω^) 「聞きたくないおっ!!!」
ツン 「ちょっ・・・・?ブーン?」
(#^ω^) 「わかってるお!わかってるんだお!?」
       「ショボンは親友だお!腕もたつお!すごいいいやつだお!?」
ツン 「何よっ!?いきなり、何をいいだしてるのよ!?・・・キャっ!」

掴むツンの腕を乱暴に振り払い、目には涙をためて、吼える

(#^ω^) 「先生が・・・先生が認めるのもわかるお・・・・!?」
       「でも・・・!!それでも・・・・!!!」

あとは言葉にならなかった

ツン 「ちょっと!!?ブーン!?どこに行くのよ!!!!!」

(#^ω^)「⊂二二二(#^ω^)二⊃ ブーーーーーン!!!!」


   きみの口からは聞きたくなかった・・・・・・・あいつを認めることばを・・・・

39 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし ます 投稿日: 2005/11/14(月) 00:48:55 ID:xqb0AGcZ0

こんなはずではなかった。後悔の枕詞は常にこうだろう

ツンはそんなつもりで言ったわけでは、もちろんなかった
突き飛ばされ、ブーンがぶち壊していった雨戸を呆然と見つめる
追いかけても、間に合うはずがない。そこらの武士なら追いつく自信はあった
しかし、ブーンの足にはそれも無意味だ

ツン 「あの・・・・ばか・・・!!いい気になってんじゃないわよっ・・・!」

罵る言葉は酷く勇ましく、だが声音は酷く弱々しい

こうなるはずじゃなかった
いつものあいつなら・・・

( ^ω^) 「?・・ショボンがいたら、ぼくはころされるのかお?」
ツン 「#・・そ、そうじゃなくてね? 後継者は二人も要らないでしょ?」
( ^ω^) 「??・・・・後継者になれないと、ぼくはしぬお?」
ツン 「ーーーっ!! だ・か・ら!後継者はアタシの旦那様ってことじゃない!?」
   「武家の妻が、旦那以外の男を好きだったらまずいでしょ!?」
(;^ω^) 「???・・・当たり前だお? 頭は平気かお?」
ツン 「・・・・### もおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!」
(;^ω^) 「ななな、何を怒ってるお!?」

そうやって・・・とんちんかんなことを・・・返してくれたのに・・・
なんで・・・こんなときに限って・・・・・

ツン 「期待通りにっ・・!!ヤキモチなんかやくのよぉ・・・!!!」

後悔と、涙がとまらない・・・・

45 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし ます 投稿日: 2005/11/14(月) 01:21:08 ID:xqb0AGcZ0

ブーンは走り回った挙句、町ハズレの林についていた

( ^ω^) (いきおいで飛び出してしまったお・・・・)
      (らしくないお・・・ショボンもいいやつだってわかってんるんだお)

立ち止まり、木の幹に拳を叩きつける。何度も何度も。
思えば先生が刀狩を言いつけたのは、その過程で自分が死ぬことを狙ったのではないか?
刀狩のような無法な行いをさせたのは、ツンと決別させるための口実作りではなかったか?
疑念が疑念を呼ぶ、そのたびに木の幹に拳と鬱屈した思いを叩きつける

木の幹が血で真っ赤に染まり始めた頃
槍を抱えた、小柄な影がブーンの背後に忍び寄った

('A`) 「なんだか、いい感じにメンヘルってるところわりぃな」
( ^ω^) 「だれだお・・・? 用がないなら今のぼくには近寄らないで欲しいお・・・」
('A`) 「おおwwこええ、こええw」
(#^ω^) 「いい加減にするお・・・!!」
('A`) 「刀狩に用がある、って言えば、ま、わかるよな?」

48 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし ます 投稿日: 2005/11/14(月) 01:39:09 ID:xqb0AGcZ0

('・ω・`) 「お嬢さん、どうしたって言うんですか?」
ツン 「うるさいっ!!こっちくんなっ!!・・全部あんたのせいなんだからね!!」

母屋の音を聞きつけ、駆け込んだショボンが見たものは
散らばる木片の中央で泣きじゃくるツンと『方』の形に穴の空いた壁だった
ツンはいっこうに泣き止む気配も見せず
「うるさい」「こっちくんな」「あんたのせい」これだけしか言わない
先生も見かねた様子で、しかし何ができるでもなく、客間から覗く
ショボンはツンに声が聞こえない位置まで行き、先生に問うた

('・ω・`) 「先生、何があったんですか?」
先生 「・・・なに、ブーンのやつが戻ってきただけのことよ」
('・ω・`) 「!・・・」
先生 「どうした?意外だったか?」
('・ω・`) 「・・・いえ、得心がいきました」
先生 「しかし・・・・ツンにも困った物よのう・・・」
('・ω・`) 「・・と、仰いますと?」
先生 「婚約者がいるというのに・・・未だにアレだ・・・」
('・ω・`) 「先生、そのことでお聞きしたい事が・・・」

ショボンが全て言い切る前に、まるで独り言を言うかのように先生は言葉を紡ぐ

先生 「ブーンはな」
('・ω・`) 「は?」
先生 「ブーンは・・・刀狩だった」
('・ω・`) 「そんな馬鹿な!!」

51 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし ます 投稿日: 2005/11/14(月) 01:53:15 ID:xqb0AGcZ0

( ^ω^) 「!!!!」
('A`) 「刀狩、とは、大層な名前だぁな?」

距離は、既に一足一刀(一歩と刀の長さだけ)の間合い
ただし、この場合の一刀は槍のことだ

(;^ω^) 「・・・名を、名乗るお」
('A`) 「おっと、うっかりw 俺の名は毒男・・」

名乗りを上げ終える前に、ブーンは既に動いていた
持ち前の足を活かし、地面をすべるように疾走
刀はとらない。刀の重みの分だけでも槍を降ろすには十分な隙だ。
そんなものは与えない。一撃で殺すの斬撃ではなく、戦闘不能を狙う打撃
それがブーンの必殺技であった・・・・だが、

( ^ω^) 「⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブーーーーーン!!!!・・・・なにっ!?」
('A`) 「・・だ、っと。そんなにあわてなさんな?な?」

はじめに言っておこう。ブーンの突進は並の槍など苦もなくへし折る
ソレが、小柄なこの男、毒男の持つ槍にいともたやすく防がれた
特別な技などどこにもない。ただ純粋に、やり自体の強度だけで防いだのだ

槍は全て鉄で出来ていたのだ


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